
現在、本校音楽科教諭の樋口 心(ひぐち しん)教諭が青年海外協力隊として赴任中。モルディブで2年間、音楽の指導にあたります。今年1月に日本を飛び立って5ヵ月。異国で日々奮闘する中で思うことを率直に答えていただきました!
(1)いつ頃、なぜ、青年海外協力隊に参加しようと思ったのですか?
高校生の頃から青年海外協力隊に参加したいと考えていましたが、その頃は漠然と海外に行きたいということだけで、具体的に「なにかをしたい」というのはありませんでした。
大学卒業の頃に大学の近くで青年海外協力隊の説明会があり、話を聞きに言ったのですが兵庫県の公立高校の非常勤講師に採用されることが決まっていたので応募にまでは至りませんでした。
近江高校に勤めた当初の吹奏楽部の部員数は4人。青年海外協力隊のことなど忘れるくらいにクラブ活動の指導に打ち込みました。最初の数年間は「部員が練習に来ない」「来ても練習しない」。毎日「どうしたらよくなるのか?」そればかりを考え試行錯誤。その時は毎日カリカリしていました。しかし今振り返るとしんどかったですが、とても充実した時期であったと思います。
私は普段からクラブの部員に「しんどいことをしなさい。」「しんどい方を選びなさい。」とよく話をします。しかし自分自身のことを考えた時、「今、自分はしんどいことをしているのか?」と2年ほど前より疑問に感じるようになりました。今の近江高校吹奏楽部は私がなにか言わなくても自分たちで考え、自分たちで行動していけるクラブとなっています。誤解のないように付け加えておきますが、私がこの学校に来た当初の部員がよくなかったと言っているのではありません。その当時の状況としてはとても熱心にクラブをしてくれたと思います。むしろ人数も楽器も揃っていない状況で活動していたことは、現在の部員より大変であったでしょう。普段よりそのような苦労をした先輩たちがいるから今のクラブがあるとも部員に話をします。確かに吹奏楽部は年間を通じてほとんど休みもないので、部員と同様に顧問も体力的にはしんどいかもしれませんが、ここ2年ほどは精神的に本当に楽をさせてもらいました。その中で「部員は頑張っているのに自分は部員の頑張りに甘えているのではないか?」「もっと人間的に成長すればもっとたくさんのことを伝えられるのではないか?」と考えました。その中で、昔、参加を考えたことのある青年海外協力隊のことを思い出し、「もう一度、厳しい環境に身を置いて、自身を磨きなおそう。」と思ったことが参加のきっかけです。
(2)赴任するまでに、一番大変だったこと。
長野県駒ケ根市で2ヵ月、派遣前の訓練を受けたのですが、朝から晩まで英語漬け。毎日宿題。2ヵ月で中学校3年間の英語の授業時間数を軽く超えると聞いています。
英語の勉強を本格的にするのも10数年ぶりでしたので、ペースをつかむまでは楽ではありませんでした。しかし訓練が終わり、海外の映画を見た時、以前よりはるかに理解できるフレーズが増えていた時には2ヵ月の勉強の成果を実感することができました。
(3)赴任してから今まで、一番大変だったこと。
モルディブの首都に着いたのが1月5日。1月10日〜2月までケヨドゥ島でモルディブの公用語であるディベヒ語の訓練を受けました。このケヨドゥ島、島の広さがなんと250×500メートル。とても小さな島です。ここでホームステイをさせていただいたのですが、毎日カレー。カレーは好きですし、作っていただいたカレーもおいしいですが、さすがに毎日になるときつかったです。スプーンは使わず手でカレーを食べるのですがこれは数日で慣れました。
(4)専門の楽器は何ですか。その魅力は何ですか。
中学校の時から吹奏楽部に入り、トランペットを始め、高校も吹奏楽部が頑張っていると理由で選択。高校時代は京都市交響楽団の宮村 聡氏にトランペットを師事。大阪音楽大学にトランペットで入学し専攻。大学ではカナダ人トランペット奏者ダニエル・ドワヨン氏に師事しました。
トランペットの最大の魅力はその華やかさです。中学校で吹奏楽部に入部し、担当する楽器を決める時にも「トランペットをやりたい!」と猛烈にアピールしました。この時に違う楽器に選ばれていれば、私の人生もまったく違うものになっていたかもしれません。
全体の指導をするようになってからは、それぞれの楽器の魅力を知り、また別の楽器も演奏できるようになりたいと感じるようになりました。
(5)これからしていきたいことは何ですか。
現在、モルディブの最南端アッドゥ環礁フェイドゥ島にあるフェイドゥスクールで吹奏楽部の指導をしています。このフェイドゥスクールにはグレード1〜グレード10(日本でいえば小学校1年生から高校1年生)が在籍しています。先生はモルディブ人の先生とインド人の先生。そして日本人は私ひとり。職員室ではヒンディー語、ディベヒ語、英語が飛びかっています。しかし日本語を使う相手はいません。モルディブでは音楽、体育などが学校の正規科目として認可されていません。そのため楽譜が読めないのではなく、楽譜すら見たことがないという子どもがほとんどです。
吹奏楽部の方は、私が近江高校に勤めた当初と同じようにクラブに来ないメンバーがいたり、全然練習をしないメンバーがいたり、どこの国でも問題となることは同じだなと思いながら教えています。私は演奏できるまで、しつこく何度も繰り返して練習させるので、その時にうまく演奏できないとメンバーは落ち込みます。逆にうまく演奏できた時に「バラーバル!(上手くできたじゃないか)」と言うと「シュクリヤー!(ありがとう)」と最高の笑顔が返ってきます。妥協することなく指導をし、その中でこのような音楽の楽しさを少しでも多く伝えたいです。
日本に戻ったら「海外から見た日本を生徒」に伝えたいです。モルディブでも日本に対する評価は非常に高いです。この島に住む日本人は私ひとり。せっかく良いイメージを持ってもらっているので、それに恥じないような行動をしようと普段より心がけています。
最後に音楽の授業、吹奏楽部の顧問、その他公務分掌の仕事の引き継ぎを、快く引き受けてくださった小杉先生には心から感謝しています。また、関係のすべての皆さまに感謝しています。ありがとうございます。